• 医療費助成制度に関する資格確認のオンライン化
  • アップデートされた診断基準や重症度分類の、既存の医療費助成対象者への適用の問題について議論

 難病・小慢の合同委員会が、11月26日(火)16時よりAP虎ノ門C+Dルームにて開催されました。
JPAからは委員の吉川祐一代表理事が都合により欠席となったため、参考人として辻邦夫常務理事が出席しました。
今回も多くの意見が出されましたので、辻参考人の発言を中心に報告します。

当日の配布資料および議事録

下記のURLからダウンロードいただけます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_127746.html

議事次第

  1. 難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度に関するPMH(Public Medical Hub)による資格確認のオンライン化について
  2. 既存の指定難病に対する医学的知見の反映について

 議事次第「1.難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度に関するPMH(Public Medical Hub)による資格確認のオンライン化について」では、資料1を用いて、マイナンバーカードと健康保険証の一体化について簡単に説明が行われた後、前回に引き続き、難病・小慢の医療DXの取組についての説明が行われました。
 今回は、前回の委員会で残っていた、(2)オンライン資格確認と上限額管理票の電子化(左記によりマイナンバーカード1枚での受診を可能とし、受給者証を持たない方が軽症高額に該当した場合に円滑に受給者証を交付できるようにする)について、まず説明が行われました。
 オンライン資格確認については、マイナ保険証を医療費助成の受給者証として利用し、医療機関で受診できるようにする取り組み(ページ18)として、令和5年度から希望する都道府県や自治体などでの先行実施(ページ19)が始まっており、小慢の医療費助成の先行実施をしている愛知県一宮市からの声(ページ20)も紹介されました。今後、令和8年度以降の全国展開に向け、体制構築を推進することが報告されました。
 上限額管理票の電子化については、導入に向けた検討が行われており、現段階でのイメージ(ページ24)が示されました。軽症高額の該当者に対し、通知等が可能かどうか検討されているとのことです。

 議事次第「1.難病・小児慢性特定疾病医療費助成制度に関するPMH(Public Medical Hub)による資格確認のオンライン化について」についての辻参考人の意見は以下の通りです。

  • JPAでは、7月に加盟団体に対して紙の保険証廃止についてのアンケートを行い、12月に発行を停止することについては、全体の52%が反対、どちらともいえないが39%、賛成が9%となった。
    マイナンバーカードに対する不安や移行理由が不明なこと、高齢者・障害者へのフォローや情報提供が不足しているとの指摘があったため、廃止については時期尚早であり、関係機関の体制整備や患者・家族および国民の皆さんの不安払拭に向けた丁寧な説明に十分な時間を割いてほしいと発表した。
    オンライン資格確認の導入はぜひ進めてほしいが、丁寧な説明により不安を与えないようにすること、様々な理由でマイナ保険証への移行ができない方に対して、サービスの質などが落ちないことをぜひお願いしたい。

また、福島慎吾委員(認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク専務理事)も以下の意見を述べました。

  • マイナンバーカードを所持していない人やマイナ保険証を利用していない人もかなりいるとのことなので、指定難病や小慢の方が利用するメリットを実感できるよう、丁寧に伝えていくとよいかと思う。
    また、今回のPMHシステムについても、どうしても個人情報保護について心配な部分が多く生じてくるので、ぜひとも厳格な安全管理措置等を講じてほしい。軽症高額該当者への個別通知については、とても親切だと思うのでぜひ盛り込んでほしい。

同じく患者会からの構成員となっている柏木明子委員(有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会ひだまりたんぽぽ 代表)からも以下の意見が出されました。

  • これまで、紙の医療履歴のファイル等を持ち歩いていたが、パーソナルヘルスレコードのアプリを利用するようになり、マイナ連携されている自分や家族の通院履歴や処方歴など、いつでも確認できるようになり、メモ機能もあって助かっている。
    今後は、小慢や難病のオンライン資格確認、やがては自己負担上限額の管理票も、一日も早く実現するよう願っている。
  • 電子化において、診療科や医療機関の垣根を超えて診療内容について必要十分情報を担当医や救急対応に当たる医療や福祉従事者も確認できる仕組みも検討してほしい。
  • 現在、紹介状が信書扱いになっており、当事者が内容を知ることができないことが、紹介先でのスムーズなコミュニケーションに繋がらず、小児から成人への医療移行がうまくいかない要因の一つにもなっているように感じる。患者が紹介元の医師の考えを読み、正しく理解し納得した上で紹介先を受診することは、最善の医療を受け続けるために重要なことではないかと思うので、診療情報の提供、開示のあり方についても、今後、PMH等にどのように載せていくか、引き続き検討してほしい。

 他の委員からは、オンラインでの申請に加え、従来の紙での申請も継続されるとのことだが、申請を受ける立場としては、異なる申請方法が並行して動くことになるので、その点の負担軽減も考えてほしいといった指摘や、マイナ保険証についてメリットを説明するだけでなく、何が不安を招いているのか、使用に困難を感じている方の声をしっかりと聞き、改善策を考えてほしい、といった意見が出されました。

 続いて、議事次第「2.既存の指定難病に対する医学的知見の反映について」について、資料2を用いて説明が行われました。
 ページ1記載の通り、指定難病に係る診断基準及び重症度分類について、研究班を中心に最新の医学的知見を踏まえてアップデートを行っており、一部の疾患で、既認定の方のうち新たな診断基準等に該当しない患者が生じる場合があることが明らかになりました。
ただし、知見の安定性やその影響を注視するため、既認定者は引き続きアップデート前の診断基準で更新申請を行い、最新の医学的知見の反映のさせ方については、次回の難病法5年後見直しの際に検討するとの対応方針が示され、ページ1下段とページ2にて、それぞれの取り扱いについても説明がなされました。
ページ3では、アップデートにおいて、全体的な認定対象者は大幅に増えることが予想されているものの、一部対象が狭まることが明らかになった疾患について、全身性エリテマトーデス(以下、SLE)をはじめとする4疾患が報告されました。

 「2.既存の指定難病に対する医学的知見の反映について」についての、辻参考人の意見と回答の要旨は以下の通りです。

辻参考人
今回のアップデートで、表に出ているSLEの既存の受給証所持者の中で、新しい基準に照らし合わせるとSLEではないかもしれないと考えられる方は、何%あるいは何人ぐらいいると考えられるのか、その根拠はなぜなのかを教えてほしい。
また、今回、研究班の方から、対象は狭まらないと報告されていたものが、自治体から範囲が狭まるのではないかという指摘があり、この資料2の提案になったかと思うが、研究班の方から狭まるものではないと報告した理由、原因は何と考えられるのか。

事務局(難病対策課)回答
実際に何%が、何人が対象になるのかというところが、例えばSLEだと抗核抗体の値を今まで記載していなかったこともあり、具体的な推計値を出すことが難しい。(そのため、研究班も具体的な数値の把握ができなかった。)ですので、これからどういった患者さんに影響するのか、どのくらいの患者さんがいるのかも含めて調査が必要と考えている。

辻参考人

  1. 研究班から一度は「狭まらない」と報告があったにもかかわらず、、自治体から狭まるものではないかと指摘をうけたことを受け、周知期間を設ける等の対応の前に、このままでよいのか研究班に検討してもらう必要があるのではないか。
  2. 今回のようなことが発生したことで、研究班に患者の範囲が狭まる点について、意識が低かったのではないかという懸念も生まれてきてしまう。そのように取られないように、研究班や指定難病検討委員会(以下、検討委員会)に当事者や一般市民が参画しする仕組みづくりも必要なのではないか。
  3. 既に認定されているの受給証所持者に対して、まず新基準で当てはめ、そうでない方を一旦外した上で、旧基準で救済するようにも見え、既に認定を受けている患者に不安を与える要因になるのではないか。
    過去の診断時にさかのぼってその記録と新しい診断基準を照らし合わせて、これは違う疾患であろうと判断することは非常に危険なのではないか。

事務局(難病対策課)回答
1点目の診断基準の再検討について、現在の基準は最新の医学的な知見を反映した診断基準になっていて、その前に用いていた分類基準よりも感度・特異度が同等以上、特に感度についてはかなり上がっていると認識している。そうした点からも新基準を適用していくのは妥当であると考えている。一方で、アップデート時に認定対象から外れる方がいた点については、これから最新のアップデートに伴う影響調査等を行うことによって、この対策委員会でも議論したいと考えている。
2点目の研究班等への患者団体・患者の参画については、前回の対策委員会でも議論しました通り、研究班の中で積極的に患者団体さんとの連携を取ってもらい、療養生活も含め様々な情報を得てもらう仕組みを整えていく必要があると思う。
3点目の新基準から当てはめることについて、新しい基準は先ほども申し上げたとおり、最新かつ妥当な評価の基準だと考えているので、その新基準からまずは当てはめ、そこで当てはまらない方は、旧基準を一旦適用することとし、既存の患者さんに対してのその後の対応については、アップデートに伴う新たな知見や影響調査等を踏まえ、引き続き議論したいと考えている。

辻参考人
登録者証についても、過去に確定診断されたけれども診断基準がアップデートされ、いつの間にかその病気でないことになっていて申請できなくなる現象も発生しうると思う。

 その後、医療側の構成員の委員からは、過去の診断基準で診断された患者に対し、過去の数値を遡って、新しい診断基準に当てはめて診断し直すことは科学的にはやってはならない大原則であることや訴訟の対象になるとの指摘がありました。また、自治体の構成員の委員からは、過去に認定したところに遡って新しい基準を適用することは、前の判断は一体何だったのかと、非常に違和感を覚えるといった意見や過去のデータを調べ直すことは、膨大な作業を事務方や医療機関に求めることになり、行政機関としても非常に負担があるため避けてほしい等の意見が出されました。

辻参考人
旧基準の適用について、「当面の間は」との発言があったが、当面の間ということは、ゆくゆくは過去に遡って新基準から外れる患者を探し、その人を医療費助成の対象から外していくようにも取れるが、そうすると先ほどの医療側の委員の先生の意見と全く矛盾する話になる。
一般的に考えても、過去に遡って探し出し、適用から外していく犯人探しのようなことはあまり好ましくないのではないだろうか。

事務局(難病対策課)回答
当分の間とお伝えしましたが、それは終わりがどこまでと期限が示されているものではなく、先ほど医療や行政側から出された意見を踏まえ、まずはどういう運用であるべきかの議論をお願いしたいという趣旨で、それをこれから対策委員会で議論していくことになるかと思う。
行政としては、制度の安定性、公平・公正な制度を維持する責任もある。先ほど出された意見については、研究班と相談しなくてはいけないが、全ての疾病においてデータを確認することが難しいのかなど、個別疾患により事情が違うようにも思う。
そのため、ここで一般論としてどう扱うか決めるということではなく、今回、研究班から挙がっている回答を示した上で、当面の間は、その安定性、知見が安定しているかどうかもあるので、それらを判断する時間をいただきたいと提案している。

 その後の質疑応答のやり取りの結果、今回の提案の承認は持ち越され、次回の対策委員会で再度検討することとなりました。

 報告は以上です。

 アップデートされた新しい診断基準を既に旧基準にて指定難病と診断されている患者に当てはめ、診断し直すことは、患者・家族のみならず、医療や行政側からも無理があるとの指摘があったにもかかわらず、新たな知見や影響調査等を実施して今後判断したいとの回答にとどまりました。
また、新しい診断基準に該当しない既認定の患者へ旧基準を適用することについても、資料では期限について特段の記載はなかったものの、委員会の中では「当面の間は」旧基準を適用していくという発言が繰り返されており、今後も注視していく必要があります。
 当日は、多くの質疑が出されたため、詳細は公開された議事録をご覧ください。最後までお読みいただきありがとうございました。

 次回の委員会は、2024年12月26日(木)16時より実施予定です。YouTubeでのライブ配信も予定されていますので、ぜひご注目ください。

第74回難病対策委員会・第5回小児慢性特定疾病対策委員会(合同開催)(ペーパーレス)
開催日時:令和6年12月26日(木)16:00~17:00
開催案内:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47483.html

以上